電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

ワイルドサイドは歩いてない

「スキヤキウエスタン ジャンゴ」が面白かったので、三池崇史ブームが自分の中で到来してしまい、立て続けに録画しておいた最近作を2本見た。悪く言えば粗製濫造、良く言えば職人気質でどんなタイプの映画でもテキパキと撮り上げてしまう監督であって、しかも、そこに微妙といえば微妙な三池節と言うべき悪ふざけ的な小技を放り込んでいき、それが五月蝿い場合が多いので、かなり見る人を選ぶ監督だ。

1本は小栗旬主演の「クローズZERO」。少年チャンピオンな喧嘩漫画の世界を借りてオリジナルストーリーにしているらしい(原作読んでない)。珍しく悪ふざけが抑え目で、ストレートな青春映画になってる。が、そのままじゃ終わらないのが、三池らしいところで、何をやっているかというと、この映画、三池版の「ストリート・オブ・ファイヤー」なんだね。冒頭で暴れまくる高校生達に、ストリートビーツの「♪ワイルドサイドの友達に、伝えておきたいことがある〜」という印象的な歌詞のライブが被るところから、おやっと思わせてくれるし、黒木メイサの使い方とかもモロそれだし、随所に「ストリート・オブ・ファイヤー」を意識したシーンがある。ストリートビーツ以外でも、横道坊主とかが流れ。なんつーか、Jポップとかジャパニーズパンクとかカタカナで書くより、日本の健全な不良の音楽というか、任侠が入ったロックというか、音楽だけで聴いたら、比較的青臭いのが好きな自分ですら、うはっ勘弁みたいなバンドのベタな曲が見事にマッチする作りになっていて。

勿論、原典の「ストリート・オブ・ファイヤー」は、完璧なオープニングと完璧なキスシーンを持つ、有史以来最高傑作青春暴力映画なので、全然敵わない。敵わないんだが、ライバル役の山田孝之がいい味出してて、この役者「電車男」ではちゃんとオタクに見えたし、この映画ではちゃんと不良に見えるし上手い。勿論、小栗旬もいつも通り上手い(という事実はよく見逃されている)。結果、実にストレートな青春映画として、大ヒットして、続編が今年公開になるのもわかる気がする出来になっている。三池にしてはパンピー受けというか、気付かなくても充分楽しめる作りというか。

もう1本はセガのゲームを映画化した「龍が如く 劇場版」。歌舞伎町をモデルにしたとおぼしき街で、伝説のヤクザの主人公が暴れまくる話。日本映画専門Cで今リピートしてて、同時に「実写版 龍が如く〜序章〜」という、三池が総監督(という役職だけど、あまり仕事してなさそう)をした45分ほどのオリジナルビデオもやっていていたので、これと続けて見た。

「序章」の方は、ネットでやってたのを見た記憶があるんだが(見始めてから気づいた)、主役は船木誠勝、幼馴染で後に対立することになるライバルに大沢樹生、2人をガキの頃から面倒見る親分に本田博太郎という配役で、まさに、劇場版の予告編みたいな話。これが三池劇場版になると、船木さんが北村一輝大沢樹生真木蔵人本田博太郎塩見三省に変わってしまい、ええーっという感じなんだが(北村一輝、相当身体鍛えているけど、さすがに船木さんのハイブリットボディーに比較しちゃうと厚みも幅も足りない)、それ以上にハチャメチャなのは、多分原作ゲームのキャラなんだろうけど、ストーリーとしてマトメ切れてない脇役キャラをバンバン出しちゃって、もう収拾がつかない状態。

映画に整合性とか求める人だったら、絶対ふざけんなと思う筈だが、いやそんなこと言われても、マジメに意図的にふざけているのであって、それが楽しい人には堪らない面白さ。「クローズZERO」にも出てる、岸谷五朗が、3の線で怪演してて、美味しいところをもっていくんだが、格闘技関係者目線だと、その子分役で、木村浩一郎さんがコワモテな役で出てて科白もあって大活躍してたりする。自分にはとにかく心底楽しめる、超クソ映画だった。「クローズZERO」と「龍が如く」、どちらか一本選べと言われたら、おれはこっちを選んじゃうかも。まあ、映画的によく出来ているのは、前者であることは強調しておくけどさ。

同じヴァイオレンスアクションなのに、こういうまったく逆方向に振り切った映画を、同じ時期に作っちゃう三池は、やっぱり大したもんなわけだが、そう思って片っ端から見ると半分くらいは外れな監督ではあるので油断出来ないところが三池。この前の大河ドラマ天地人」に役者としてゲスト出演してて、やたらヘタクソでイマイチでした。