電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

春になると雪山ではハートのイヤリングと白骨死体がみつかる

昔のいい映画ばかり観ていると、何だこれはイマイチだなということはあっても、それなりにいい所は探せてしまう為、勘が狂うというか、批評眼が衰えてくるような気がして、たまに意識的にクソ映画を見ることにしているんだが、近頃は、これがちょっと難しいんだよな。例えば、撮り貯めしてる映画から、最近なら「ミッドナイト イーグル」と「ベクシル 2077 日本鎖国」を、その不評っぷりから、これならまさか外れないだろう、それは悪い意味であって、練りに練ったチョイスのつもりだったんだが、実際見てみると、これが意外と面白かったりする。

勿論、この2作を期待して劇場まで見た人にしてみれば(「ミッドナイト イーグル」をドキドキして見に行く人はあまり多くない(?)とは思うが、「ベクシル〜」の方は「ピンポン」がよかった曽利文彦だし、自分も予告編を見て、これは行こうかなあとちょっと思った記憶があるくらいなので、まあ結構いるんじゃないかと思う)、あまりに、2作とも突っ込みどころがあり過ぎて、ふざんけんなと怒った人も多いとは思う。

この最近の、そこそこ話題になった邦画2作の内容をイチイチ説明したりはしないけど、「ミッドナイト イーグル」の方は雪山モノなのに、肝心の雪山の風景が、もう圧倒的にショボくてガックリ来る。

雪山モノと言えば、ガキの頃に、クリント・イーストウッドの「アイガー・サンクション」を、多分封切りで観て、やたら面白かった記憶があって(それ以来一度も観ていないので、確証がないからお勧め映画にはしない)、この辺りと比べてしまうのは、さすがに可哀想とは思うものの、例えば邦画でも、黒澤が脚本を書いて、当時はまだ東宝に入ったばかりで登山好きだった岡本喜八を助監督にして、谷口千吉が撮った「銀嶺の果て」という映画があって、去年、日本映画専門チャンネルで黒澤脚本作品としてリピートされ、喜八助監督作品として、喜八特集をやっていた、ラビュタ阿佐ヶ谷でも上映された。

この映画、難しいテーマもない、悪人が雪山に逃げ込んでひと騒動という娯楽映画なんだが、黒澤脚本で、喜八が助監で、役者は三船敏郎志村喬ですよ。そりゃ観ちゃうわな。で、この映画の雪山シーンの美しさといったら。もう美しい雪山でカッコいいカットを撮ろうする意気込みとか志が、根本から違うのだとしか言いようがなく、こんな映画が60年前に撮られていることを考えれば「ミッドナイト イーグル」はその志の低さだけで、クソ映画といって間違いなく、それでも本筋とはあまり関係なく延々展開されるお涙頂戴シーンに号泣してしまう、馬鹿なおれ。

喜八で雪山モノといえば、「私をスキーに連れてって」(この映画は誰がバカにしようが、おれはいい映画だと思う)も意識したとされる「大学の山賊たち」というのがあって、これは何故かDVDになってなく、去年、ラビュタ阿佐ヶ谷でやった時にようやく観たのだが、あまりのスノップぶり(いい意味で)にビックリした。オシャレなの。このスノッブ感は、初期の喜八、例えば監督デビュー作の「結婚のすべて」(新珠三千代がここでもエロい、喜八と仲がよかった三船がゲストで出てきてオカマ役を怪演)あたりにも共通してて、なのにこれもDVD化されてない、出してくれー。とか書いておくと、されたりするんだこれが。