電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

山椒魚

平和な時代のお伽噺だとしか思えないんだが、昔は資本家はみんな悪い奴で、労働者をコキ使い搾取しまくっていい思いをして、ぐふふと下品に笑って、だから、万国の労働者は一致団結、協力して、資本家に立ち向かわなければならないというのがあった。

ところが、自分が社会人になってみると、概して労働者は怠け者で、資本家の方が勤勉であり、確かに悪い奴はいっぱいいるものの、多くの場合、搾取ではなく正当(百歩譲っても、まあしょうがないよねレベル)な賃金である場合がほとんどで、なんだこれが世間というモノか、しょうがないんだな世の中という思いばかりすることが多くなり。

ここまで話を極端に拡大・一般化せず、小さい組織、つまり中小企業の話にあてはめてみても、事情は似たようなもんで、勿論弱小組織の場合は、トップであっても、資本家でもなんでもないのに関わらず、下からは給料が安い、労働条件が悪いと突き上げられ、取引先からはイジメられ、毎日金策に走りまわり、ひーこら言いながらも、概ね社員より勤勉である場合がほとんどで、何よりある程度の責任感をもっていないと、どうしたって勤まらない。

親が金持ちで資本家で、ヒラ社員なんて経験したことないなんていう、お坊ちゃまお嬢さまも、ある割合で、いるにはいるし、そういう人間も随分見てきた。が、そういう人間にしたって、現状維持ですら苦労をするわけで、白鳥は優雅にみえても水の下では何とやら。

誰しも自分のことを棚上げして他人の文句を言う。メチャクチャ言う。当たり前だ。だけど、自分は昔から、これが苦手で自分を棚上げしない。苦手というか、嫌いなのだ。勿論、文句は言いますぜ。自分との相対評価の上で。若い頃、派遣をやってた時、「下がこんなに必死にやっているのに、何故上は答えないんだ」と会社の壁を蹴破って、それなりに広いフロアを凍りつかせたことがある。結果として、どうなったかと言えば、自分の告発対象だった無責任な中間管理職の立場を、役職もないまま(そりゃそうだ派遣だし)、与えられ、「まあキミが頼りだ、よろしく頼むよ」と偉い人に言われて、さらに忙しくなって、賃金は上がらず、ストレスを溜め込むばかりであった。引き換えに得たものは「あいつは仕事をする」という評価だけだ。

だからと言って、損をしたとは、まったく思ってない。ああ、楽しい人生だった。

いや何でこんなことを書いているのかといえば、「あいつはまた同じことをしようとしている」という同情や心配や、馬鹿な奴という意見を、間接的直接的に頂くことが、ぽつぼつと増えてきて。別にいいじゃんよ、好きでやってんだから。多くの人は、自分より仕事をしない奴を見ると怒るし、自分より仕事する奴を見ると不思議がる。誰もがみんな自分基準。そりゃそうだ。挙句、おれは珍獣扱いだ。これがパンダとか可愛い奴ならいいんだが、山椒魚とかそういう気味悪がられるレベルに扱われる。まあ、しょうがない。しょうがないよな。