電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

デブはラーメンの汁を残すな

昔某所に書いたものを再掲。自分で言うのも何だが、ホントいい話だなあ。

デブがラーメンの汁を残しているのを見ると、それはちょっと違うんじゃないのと思う。ついこの前も、ラーメンではないが、富士そばで、カツ丼セットを食っていた物凄いデブが、汁蕎麦のつゆを残していた。お前、カツ丼セット食っといて、それはないだろう。

何回も書いている、蕎麦は音を立てて食えという話とは、ちょっと違う。あれは文化の話であり、道理の話であり、粋の話だ。一方、これは徹底的に私的感覚の話。

では、デブじゃなければ、ラーメンの汁を残していいのかと云えば、歓迎は出来ないが、ギリギリ許容範囲というところだ。「あっしには関わりねえことでござんす」と、紋次郎ばりに無視をすることが辛うじて可能。ところが、デブだと、桃太郎侍ばりに「不埒な悪行三昧」って感じ。

もう20年近く前になるが、吉祥寺のホープ軒(飲むとよく食いたくなって行っていた、さすがに10年くらい行ってないけど)で、隣に明らかに飲み会上がりのデブとヤセの2人組みがいて、ヤセの方が、その当時から存在はしていた(まだ少なかったが)健康オタクらしく、ラーメンなのに、チマチマ食いながら「こんなモノ食っていたら中性脂肪が…」「コレステロールが…」「ああ、汁なんて飲んだら塩分が…」ともう五月蝿いの何のって。

が、このデブは正しいデブだった。「…うん」とヤセの言葉のイチイチに肯くものの、その返事にまったく感情は籠ってなく、物凄い食べっぷり。レンゲなど使わず、丼に口をつけて一気に汁まで飲み干すと、素晴らしいことに、まだ半分も進まず手をつけなくなっていたヤセの丼を「食べないの?」と一言だけ言って奪い取り、2杯目に突入したのだ。丼を奪い取られた時のヤセの「ああ、ああ、ああ…」という悲鳴に近い呟きが、未だに耳に残っている。

自分は、飲み屋とかであっても、未知の人間に話しかけるのは苦手なんだが、席を立ち際に「汁飲まないくらいなら、ラーメンなんて食うなって話だよね!」と、思わずデブに声をかけてしまった。さらにペースをあげて2杯目をすすっていたデブは、やはり「…うん」と答えたのだが、そこにはヤセに対する返事とは異なり、強い肯定の感情が籠っていて、自分はすっかりいい気分になって、ホープ軒を後にしたのであった。