電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

「龍馬伝」本格演技評

龍馬伝」、先週と今回は、中々面白かった。色々な対立構造が丁寧に描かれていて。特に、後藤象二郎をここでこう描くのは、長崎時代以降への伏線であるわけで、中々楽しめそうな感じ。

で、あっちこっちを見てまわると、田中泯演じる、吉田東洋がいいとの声が多い。まあ、わからなくはないんだが、おれはどうも関心しない。存在感はバツグンにある。が、しゃべり始めると、もうガックリなわけだ。単にヘタクソで。わかり易い言い方をすると、科白回しと表情が一致してないんだな。全部、表情一緒で。つまり、これ感情がちゃんと作れてないんである。スタニスラフスキー系列(非常にざっくりした分類だけど)の演技方法を学んだことある人なら、大概は同意してくれるのではないか。だからと言って、ダメだと言っているわけではない。今回の吉田東洋役なら、まああれでいいような気もするし、充分、魅力的であることも確か。が、やはり素人の演技という気はする。素人演技のまま、役者としても世界のキタノになってしまったビートたけし系の演技というか。

いわゆる上手い演技というのは、「龍馬伝」のここ数回でいえば、丸山でカネを使い込んだことを、両親に告白する時の、龍馬の単身乗り込みを隠れ見ながら、表情だけで内面を説明してしまう時の、嫁の可愛さにとろけてる時の香川照之の弥太郎。いつも上手い香川照之だが、今回は、ホンがその上手さを引き立てるようなツクリになっている。逆にいえば、演技が上手いからといって、必ずしも魅力的になるのかといえば、そういうわけでもないのが難しいんだが、今回は(いやこの役者の場合、大概の場合は)文句なし。

で、肝心の福山・龍馬はどうなんだという話になると、まあ、主役は、多分、あんなもんでいいんだな。正統派二枚目の演技をしている。大袈裟になり過ぎず(ちょっとなってるけど)、淡々と。元がカッコいいんだから、やり過ぎない方がいいわけね。少なくとも、演出家も福山本人も、そこはわかっている気がする。圧倒的に上手いわけではないが、「義経」の滝沢秀明ほど不快になるレベルまでヘタクソなわけでもない。いやあれはあまりに酷かったので、「新選組!」の香取慎吾くらいにしておくか。あのレベルに比べれば、はるかにチャーミングな龍馬になっているわけで、その意味では合格点なのではないか。