電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

好きではないのに勧めたくなる2本の映画

iTunesで映画が廉価でレンタル出来るようになって、観よう観ようと思っていたんだが、ようやく2本観てみた。いい画質(HD画質って分かり難いよね)の奴を1本と、通常画質の奴を1本。画質的には、文句なし。自分の現在の環境(15インチディスプレイのPCで鑑賞)なら、HD画質は必要ないかなというところ。

さて、何を観たかというと、自分は天邪鬼であることもあり、多くの人が名作・傑作と認める映画でも、どうもピンと来ないことがよくあって。そう思っている映画を、あえて2本観てみた。

1本目は「レスラー」。ミッキー・ロークのあれだ。

この俳優は「ダイナー」以来ずっと好きなんである。だからネコパンチですら、笑いはしたものの、そんなに文句を言う気にならなかった。「ホームボーイ」とか凄く好き。で、この映画だ。プロレス物ということもあり、自分の近隣でも絶賛されまくっていた。

確かに、わざと荒くしているカメラワークもいいし、ミッキー・ロークの私生活とカブるダメっぷりも、だからこそ輝くラストもいい。傑作であることを認めることには吝かではない。

けどなあ、何かリアル過ぎちゃって。ラストの一瞬みせるランディの笑顔が素敵過ぎて、好きになれない。奴はダメな奴だが幸福な奴さ的な感想を言いたくない。だって、こういう奴はよくいるというか、ランディほど過去の栄光は輝いてなく、現在の悲惨さも酷くなく、けれど、ひとつのジャンルに愚鈍にまでのめり込むある種の潔さ、それは、いわゆる常識的な社会的生活に適応できないことからの逃げでもあるわけだが、勿論、自分にもそうところがあって、そうして自分は自己否定的な人間なので、こういうダメっぷりを肯定したくならないんだな。つまり、身につまされ過ぎちゃう。

もう1本は「暴力脱獄」。

ミッキー・ローク以上に好きな、ポール・ニューマンの最高傑作という評価も多く、町山智弘なんて「これに比べれば『明日に向って撃て!』なんてクソ」とまで言ってる(『明日に向って撃て!』は自分のベストフェイバリット映画なので正直ムカつく)。昔から自分に近い人間でも、この映画を絶賛する人は多く、自分も傑作だとは思う。それでも、やはり、あんまり好きではないんである。

どうしても、観てて嫌な気になるシーンが多く。例えば、洗車女を見て、全員でおっ勃ててる囚人達のとことか。アホで楽しいなあという感じより、大袈裟過ぎるような気がして不快感が残ってしまい。オスカーまで取っているジョージ・ケネディの演技と、役どころのブルーカラー的な非知性的部分の強調もあまり好きじゃない。最も、そのすべてが、ポール・ニューマン演じるルークを輝かせる為のツマなのだというのも分かる。分かるんだがねえ。

肝心の主人公のルークがカッコよさが、中途半端に普通で気持ちのやり場がなくなったりする。弱さが普通にあって、突き抜けているところと言えば折れない心くらいで。実はこれって自分に近くて。例えば、自分は、ボクシングでいえば、打たれても打たれても前に出て行くというファイタータイプより、スタイリッシュなボクサータイプの方が好きだ。ガッツならおれでもあるよ、だから観たいのは自分にないモノだというか。

この映画、そういうことなんである。なので、実は若い頃に1回観たきりで。町山智弘が指摘しているキリストのメタファーとか知って、今回は印象変わるかなと思ったが、やはり変わらなかった。

この2本の映画、自分の理性は傑作と認める。が、感性が拒否する。それでもやはり必見作だとは思うんで、お勧め映画のカテゴリーには入れておく。