電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

坂の下のドブ川3

本年度最終回(通しで9回目)の「坂の上の雲」、まあよかったんではないか。広瀬武夫に焦点を当てて。前回(って3回目は書いてないけど)の感想はこちら

自分は祖母や母から、そこそこ軍歌やそれに類するものを聞いていて、日露戦争モノだと何と言っても「旅順開城約成りて、敵の将軍ステッセル」で始まる「水師営の会見」で、これなど1番なら未だに空で歌えるんだが、広瀬武夫の歌は、知らない(聞いた記憶すらない)。

例えば、日清戦争の「死んでもラッパを離しませんでした」とか、上海事変の爆弾三勇士などの話は、半ばギャグ的に扱われていた戦後的価値観の中で知った話で、親族から教わったモノではない。広瀬武夫の話も同様だ。が、前述のふたつの話などは、その行動から、戦意高揚や修身的な意味合いを引き出すのは簡単だが、その意味で、広瀬の「杉野は何処」の話、何でこれが軍神になるのが未だによくわからないんだよな。

失敗した作戦の撤退戦で、1人の部下を気遣って脱出が遅れた指揮官の戦死である。これが、何故軍神になってしまうのか、理解できない。事実、ドラマ内でも描かれたこの第二次閉塞作戦での戦死者は、総員60名強のうち、広瀬を含め4名(という数字が正しいのかよく知らんが、まあ40名であることはないだろう)であり、死に方を見ても、逃げ遅れた末の事故的戦死だと思う。

で、これを大河ドラマ坂の上の雲」でどう描いたか。結果としては、充分説得力があった。藤本隆宏の好演と、脚本の力だろう。これなら指揮官としての判断もギリギリながらセーフであるような気がするし(が、どうみたって、自身1人で船内捜索は、やはり指揮官としておかしい)、撤退用ボートでの部下を励ます模写が何より美しい。まあ、これなら軍神でもしょうがないかなという感じで。

つまり、ドラマとして成功ということ。

まあね、アリアズナの回想挟むのウザいというか、タイタニックじゃねえんだからロケットの海中沈没クサいとか、ケチをつけるならつけられなくはないんだが(実際、おれの感情移入はクサさのあまり確実に抜けた)、かと言って、スイーツも嫌いじゃないので、いいということにしよう。

美空ひばりの息子(なんて書く奴は今時いないか、加藤雅也だ)の作戦失敗の後の潔さといい、日露戦争までは、日本の軍隊はまさにサムライスピリットが生きていたんだということなら、それに異存はない(事実かどうかは別として)。

去年の第一部に比較して物足りないと書いた特撮も、まあよかった。艦隊が単縦列な模写と、旅順要塞の砲台が特に。後者は、一瞬、近場から舐めたシーンがあったものの、それ以外は遠目からの静止画のみ。これをどの位、動かせるかが、旅順攻略戦の肝だと思う。って、次は来年の暮れだものなあ。あまりに長過ぎるというか、また一部から見直さないといかんのかというか。

そうそう、懸念された(苦笑)、石原さとみは結構いい。凛とした美しさというか(さらに苦笑)。