電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

ファンという貧しい人生

広い意味での格闘技の世界、さっぱり良い事ありませんな。

わざわざ、広い意味と書いたのは、これはもう格闘技の世界というより、芸能まで含めた興行の世界、すべて暗夜行路であって、このまま不景気が益々加速して、恐慌に近いものまで行くのか、それとも経済構造が激変しているだけで、全体レベルにおいても景気自体はじわじわ落ちつつも、それなりの経済規模は維持されていくのか、もうその辺りの見極めを考えなくてはいけないレベルに到達しつつあると思うんだが、そういう事は偉い人は決して言わない。

日本にも本当の意味でのパンクが生れる瞬間に立ち会えるのかもしれない。というような事は繰り返し書いているわけだが、かと言って、マルコム・マクラーレンがいなければ、ピストルズは世に出なかったわけだし、ジョー・ストラマー中産階級の出身だし、結局、ニューヨークパンクが、ロンドンに飛び火して、いわゆるパンクに成長する為には、カネの匂いをプンプン巻き散らかして貧乏な若者を釣ったり、政治的な怒りをポップカルチャーのムーブメントにまで扇動する、汚れた大人の暗躍が必要だったわけだ。

ところが、この時代、あまりに底辺の情報が先んじて流通し過ぎて、扇動が成功する前に、汚れた思惑ばかりが先に見えてしまい、簡単には上手くいかない。

と、前フリが長くなったが、ジャッジとも競技とも遠く離れて、ファン論を1回。

自分のように、長年、女子の総合に関わっていると、昨今の他業界の成功例として、あれを見習えと言われることがあって、最近では、ビーチバレーの浅尾美和と、AKB商法だ。前者の場合、写真集はそこそこ売れたんだろうし、タレントとしての露出価値は現時点でもそれなりにはあると思うが、ビーチバレーという競技の底上げにどれだけ役に立ったのかと言われると疑問だらけ。実力が足りないんだな。競技のアイコンになれるほどには。

後者も見習うべき点は多く存在するとは思うものの、結局、まとまった資本投下が出来ない代わりに、数多いパフォーマーサイドに初期投資のリスクを分散して継続するという方法で、何とかここまで成功することに至ったものの、それぞれが投資したモノを回収出来ているのかといえば、そんなわけもなく、結局、極一部のファンに多く持ち出しを強いるあの構造が、格闘技的にみて、何かの参考になるとも思えない。真にファンの事を考えるなら、選手グッズに数十万のカネを出す位なら、選手とチームを直接支援した方が、よほど効率がいいのである。

簡単な話、貴方がある選手を応援していて、その選手が所属するチーム/ジムを応援しているのなら、答えは簡単だ。そのジムの会員になってあげればよい。幽霊会員でいいのである。それが一番の支援であり応援だ。それでも余力があるなら、もしくは、ジムなんて応援してない、選手個人を応援したいのだというのなら、その選手に飯でもおもって、こづかいを渡せばいい。貴方がカネを持っているなら、それは簡単なことなんである。勿論、そうやって余計なカネを渡すと、若い選手のほとんどは、残念ながら堕落する。悲しいことにかなりの確率でそうなる。それは知った上でやった方がいいとは思うが。

どこか特定のプロモーションを応援しているというならば、話はもっと簡単だ。会場に行く行かないに限らず、チケットを買えばよい。たくさん買えばよい。どこも余っているんだから。もっと支援したいというならば、それに加えて、スポンサードの申し出をすればいい。安心して欲しいのは、プロモーションの人間、特に上の方にいる人間は、カネを渡した位では堕落はしない。ああ助かったと、心の底から感謝するだろう。そうして言うだろう、もっとカネ持ってるお知り合い紹介してくれませんかね?

そんな経済力はないと、多くのファンは言う。爪に火をともすようにして貯めたカネで、いくつもある観たい大会から、やっとのこと数ヶ月にひとつだけ選んで会場に行っているのだ。だったら、貴方は祈るしかない。私はあの選手を、あのプロモーションを、そして総合格闘技を、応援しているんだと。そういう思いも集まれば、奇跡を起すことも、極々稀にある。

ひとつだけ間違いのないのは、応援というのは無私なモノであるべきであって、自己主張だか何だか、よくわからないようなネットの書き込みなどは、応援の風下において掃いて棄てるべきであって、誰もがこんな簡単なことを理解せず、否、ホントはみんな知っているのだろう、唯一の真理は、同情するならカネをくれに決まっているのに、このネット全盛の時代、自分も何か出来るかもと勘違いする奴が増えて、だったら、お前みたいな貧乏人はどうでもいいから、まずはお前の会社の社長を口説いて、スポンサードさせ給え。

先週の「朝まで生テレビ」は、ホリエモン東浩紀が出ていて、暴論混じりの正論を言うので、面白くなった。「朝まで生テレビ」といえば、大昔、プロ野球を扱った時に、大島渚が面白いことを言ったことがある。滔々と、選手の優れたパフォーマンスを見る喜びと、チームの応援のし甲斐を語るファンに向けて一言。

「そんな人生は貧しい」

きっぱり断言である。暴論ではあるが、圧倒的に正論だ。

貴方がそう言われて、悲しいなら、悔しいなら、腹が立つなら、貴方自身がパフォーマーの側に回るしかない。ほとんどの人間は、大した才能は持っていない。少なくとも、他人にパフォーマンスを晒してそれでお金を頂けるほどは。けれど、パフォーマーの側に回ってみて(勿論この場合のパフォーマーとは、競技者だけではなく、運営側やメディアも含めての広い意味で言っている)、さらに貧乏になっても、さらにボロボロになっても、自分は何の責任も取れないけれど、その時、改めてもう一度色々考えてみると、きっと、何かが見えるかもしれないとは思う。