電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

今こそファンタジーにしか超えられない

先月末に、スタジオジブリの新作の会見(正確には主題歌発表会見)があって、まあ、監督ダメ息子だし大した期待は出来ないので、映画自体はどうでもいいんだが、その時の宮崎駿の発言は色々考えさせるものがあった。

曰く「今はファンタジーを作る時期ではない。今こそ等身大の人間を描かなければ」。

この発言に違和感を覚えた人はかなり多いと思う。勿論、会見の詳細をもう少し追ってみると、「いまだ埋葬できずにいる多くの人を抱え、国土の一部を失いつつあるこの国で、アニメを作っている自覚をもって仕事を続けている。文明の模索と向き合う時期を迎えたが、今は軽々しく文明論を語る時期ではない」という事だし、「風の谷のナウシカ」が文明の模索と向き合うと、頭でっかちになって「もののけ姫」になった事を思えば、宮崎駿には本気で文明論に向かい合って欲しくないとすら思うし、さらに言えば、等身大の人間を描くのには、アニメは向いてないだろとも思う。

と、詳細に何かを書いていけば、擁護も反論もいくらでも出来るのだが、最大の問題は、上記の「ファンタジーを作る時期ではない」発言は、あたかも宮崎駿自身が、ファンタジーの力を信じてないような印象を抱かせる事であって、おそらく、自身がさほど頭を使わなくとも回りが世話を焼いてくれて、ジャブジャブカネ使って、好きな事が出来るアーティストランキング第1位の人であるにも関わらず(勿論、そういう位置に宮崎駿が立つ為には、彼の巨大な才能と過去の積み上げがあったからなんだが)、こういう時期だからこそ、益々ジャブジャブカネ使って、ファンタジーしまくって欲しいなあと強く思う。まあ、今の宮崎駿に何を期待出来るのかと言われると、かなり心許ないのも確かで、今の宮崎駿が文明論にもなるファンタジーを作ると「世界の綻びは閉じました」と一言言うと、原発止まっちゃいそうだ。

震災後、映画も本も読む気がしなかった自分が、最初に観た映画は「風の谷のナウシカ」、続いて「天空の城ラピュタ」だったのだよ。自分はアニメなんてまるで好きではないのだ。だから、それは、決して現実逃避ではない。人の想像力の豊かさと可能性を、もう一度確認したかったんだ。