電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

私を月まで連れてって

さて宮崎駿の2本も観たので、次は何の映画を観ようかなと選択したのが、この「スペース カウボーイ」。

最近のクリント・イーストウッドの映画は、センスが合わないのだ「ミリオン・ダラー・ベイビー」以降。いい映画なのはよくわかる。特に「グラン・トリノ」とか。けどなあ、何か、良過ぎてね。自分は小説や芝居だと、比較的難解(で概ね文学的)なモノを好む傾向があるのに、何故か映画とマンガは娯楽作品の方が好きなんだよね。

という説明だけでは、すべてを言い表しているとは言い難いが、自分が最後のイーストウッド作品的に好きなのが、この「スペース カウボーイ」。

この映画、基本が活劇なんである。馬鹿馬鹿しい映画、言い方を変えれば、悪い意味で典型的なファンタジー。ちょっとした事件が起こり、過去に宇宙飛行士候補だった4人の爺さんが召還され、スペースシャトルで宇宙に行くという夢を果たす。けれども……という話。

この4人の爺さんのキャストをみると、まずトミー・リー・ジョーンズに引っ掛かる。自分は古い映画ファンなので、この人、あまりよく知らなかった。ジェームズ・ガーナーと言えば、何といっても「大脱走」だし、ドナルド・サザーランドと言えば、「M☆A☆S☆H」だし、「24」のキーファーのパパでもある。でも、トミー・リー・ジョーンズって誰よって感じで。自分はこのオジさんは、缶コーヒーのCMで知ったくらいで。

実際、他の3人とトミー・リー・ジョーンズは一回り以上歳が違っていて、他の3人は歳相応の役なんだが、彼だけ老け役をやっているんだね。では、この役が合うイーストウッドと同世代は誰かなとか考えると、ちょっと難しくて楽しい。ジーン・ハックマンショーン・コネリーあたりか。意外やバート・レイノルズとかどうだ。が、このあたりのマッチョ系大根二枚目(ショーン・コネリーは晩年随分よくなったけど)が演じているのをイメージしてみると、このトミー・リー・ジョーンズという役者を使った事が、多分正解である事がわかる。他より格下な事で、結構融通が効いているというか。実際、かなり美味しい役。

七人の侍」風の仲間集めあり、ジジイの恋愛あり、若手との意地張り合いの対決ありで、話は軽快に進み、ちゃんと典型ハリウッド的SF大作風に盛り上がって、美しい結末を迎える。

宇宙開発は、ロマンが基本。けれど、ロマンだけじゃ済まされない。それがこの映画でもさらっと描かれている。勿論、原子力の問題も含めて。人の営為は、いつの時代でも馬鹿馬鹿しく、愚かなもので、だからこそ素敵になりうる。勿論、徹底的に醜い営為もあるからこそ、それに抵抗する美しさが引き立つというところを、自分は観たくて、これを引っ張り出した次第。