電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

トルケルさんと王騎さん、どっちが強いか

幸村誠の「ヴィンランド・サガ」は最新刊が8巻、原泰久の「キングダム」は最新刊が15巻、前者はヴァイキングのクヌート大王、後者は秦の始皇帝、西洋と東洋の違いはあれど、イマイチ詳細が日本人には知られていな歴史を掘り起こしながら、存分に歴史で遊べている。共に最高に面白いと思う。

内容は別として、この2作で最強といえば、「ヴィンランド・サガ」はトルケルさん、「キングダム」は王騎さんであることは言うまでもない。勿論、この2作、素手ゴロ一番を争うマンガではないので、最強だからといって、それがどうしたという問題ではあるし、肉体的に最強であるこれらの男達は、肉体的には脆弱であるクヌート王子や、政(始皇帝)の駒とならざるを得ない運命なのであって、この辺りから「世界最強はアメリカの大統領」的価値観が発生するわけだが、その話はここではおいておくとしても、例えば、総合格闘技に対して、観る側であったり、やらせる側(不遜な表現)であったり、やる側には決して回らない自分、つまり肉体的には脆弱である自分であるならば、むしろクヌートや政に、感情移入してしまいそうなもんなんだが、そうでもないところが、物語の面白いところ。やはり肉体的に最強なのが、男のロマンというか、すべての生物にとってロマンなのだというか。

勿論、この2人タイプは違っていて、トルケルさんは、ただひたすらにロマン系武闘型、王騎さんは、戦術・軍師的にも冴えをみせる万能型、唯一の共通点といえば、アントニオ猪木へのオマージュ(といえるかどうかは微妙だが)が捧げられているキャラであることなんだが、それにしたって、完全無欠の万能型にしてしまうと、あまり面白くなくなってしまうのであって、万能型にするなら、性格的にどう破綻させて魅力的なキャラにするかが勝負であり、例えば、少年ジャンプで西尾維新が原作を書いている「めだかボックス」、自分は悪くないと思うんだが、どうも人気は低迷しているようで、じきに打ち切られそうな勢い。

万能型で成功している例といえば、やはり自分が好きな川原正敏の「海皇紀」の主人公、ファン・ガンマ・ビゼンだと思うが、この主人公の場合は、超万能型でありながら、怠け者というキャラで、それでも万能過ぎて、好きじゃない人も多いようなので、難しいところ。まあ、それ以前に川原正敏はあの絵に問題があるという話も大きいが。

万能型なら、最強に近いところにいるものの、2番手どまりというキャラが魅力的になりやすい。分かり易い例をひとつあげれば、「北斗の拳」のトキの役どころだ。「ヴィンランド・サガ」であれば、何と言ってもアシェラッドさんであって、肉体的にはトルケルに勝てず、人間的にもトールズには勝てず、性格的にも充分歪んでいて、そこが魅力的だという。ところが、そのアシェラッドさん、最新刊で、突然、死んじゃった。あんまりだ。しかも、帯でそれ書いてあるし。勘弁して欲しい。

だけど、アシェラッドさん。私にとって最強とは貴方でした。カッコ良すぎ。