電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

ビッグブルーにはコボラーはいなかった

リクエストがあったので、SEらしい話を少し。

自分は23の頃から、いわゆるプログラマーをやっているわけだが、そもそも、SEとプログラマーの違いなんてないんだということは、未だ「組む側」以外の人間以外はわかってないし、まあ、それはそれでいい。そもそもが、システムエンジニア和製英語であり、英語では、シニアプログラマーというのが、プログラマーの上級職だ。かと言って、プログラムを組む以上、プログラマーなんであって、それ以外の何物でもない。

自分は、いわゆるコボラーメインフレームの世界からスタートしていて、メインフレームというのは、とにかく、貴方が想像できる一番デカいコンピュータを想像してもらえばいいのだが、初めて配属されたのは、いわゆる第3次オンライン、しかも勘定系の末端であった。バブルな真っ最中。当時は、銀行だったり証券だったり、固い業界のシステムに携わることが多く、全体を見渡せば、百の単位の人間がひとつのシステムを組み上げることに携わっている世界。銀行の店頭でキャッシュカードを使ったことがない人は、ほとんどいないと思うが、それを取りまとめているプログラム群と想像してもらえば、当るといえども遠からずという感じ。

こういう世界では、プログラマーは、やがて、設計やら何やら上流工程という名の折衝屋となり、さらには実際にプログラムを組まずに他人の進捗を管理することだけが仕事となって、それをプロジェクト管理屋と呼ぶ。

それがイヤでねえ。5年で勤めていた小さいソフトハウスを辞め(ずっと老舗のソフトハウスに出向していたので、本社で仕事したことなど一度もないまま)、いわゆるフリーな派遣されるSEで、同じ金融系の仕事を数年やって、ああ、どこに行こうとやること同じだと思い、30過ぎてから、PC系の仕事に転向しようと思った。小さい手作りのプロジェクトをやりたかったのだ。

いわゆるコボラーの世界から、PCの世界に転向に成功する奴は、当時はあまり多くなかった。独学だったから、そこそこ苦労はしたものの(PCの勉強がてら、パソコン通信を始めたことが、ネットとの出会いとなり、それをキッカケに人生変わっていくのだが)、まあ、未だに食うだけなら、何となく食えている。

IBMがビッグブルーと言われていた当時、実はIBMのメインフレームの世界には、コボラーなんていなかったという事実は、あまり知られていない。例えば、いわゆる都市銀のトップレベルになると、もう合併しまくって当時の名前は生きてないが、少なめに見積っても、都市銀トップレベルの半分以上は、勘定系はIBMのマシンだった。

当時のIBMのメインフレーム、システム360/370(OSでいえば3090/MVSとかだ)に、コボラーなんぞはいなかった。IBMが推奨する言語が「PL/I」だったのだ。だから、わざわざ「いわゆるコボラー」という表現を使っているわけだが、自分が当時やっていたのは、アセンブラで書かれた1960年代から70年代にかけての古いプログラムを、「PL/I」にリライトしたり、アセンブラの直メンテナンスだった。

プログラム言語というのは、高級と低級というのがあり、こう書くと語弊はあるものの、高級になればなるほど、馬鹿でも組めるようになっている。コボルとか「PL/I」とかは、高級言語という。つまりプログラミングの開発効率をあげる為に、組みやすくなっている言語だ。一方、アセンブラというのは、そのマシンごとに違っていて(まあ基本は似ているんだが)、機械命令をとりあえず人間の目で理解できるように、書き出しただけのものだ。低級言語であり、プログラミング言語ですらないという定義もある。これを最初の数年でみっちりやったことが、プログラマーとしては、自分の財産となっている。

IT業界以外の人に、「コボラーとは何か」というのを説明するのは難しい。無理に説明しようとするなら、ノコギリしか使えない大工見習いが、「私はノコギリしか使えません」と開き直っていても、ノコギリ仕事が多い為、何となく大工であるフリを出来る状態といえるかもしれない。そういう奴を蔑視を込めて、コボラーという。もしくは、自嘲表現として「おれなんて、所詮コボラーだしな」みたいに使う。あの時代、如何に「自分はコボルしか出来ません」と開き直る奴が多かったか。いや今でも結構いるんだが、食う為の仕事なんて、そんなものかもしれない。

そういうボンクラをナダめスカして仕事させるのが、プロジェクト管理屋の仕事となる。それがイヤだった。やる気のある奴だけ集まって、質の高い仕事をしたい。そう思ってPC系に転向した。勿論、PC系にだって「VBしか出来ません」というボンクラがいっぱいいて、またここじゃないどこかに行きたくなるのに、そんなに時間はかからなかったんだが。

言語なんて何でも同じ。言語の好き嫌いを言う奴は二流以下。ずっとそう思っている。勿論、言語の好き嫌いを主張するような奴の方が、見所がある場合が多いのも確かだが、言語を言い訳にする奴はボンクラ以外の何物でもない。SE仕事に一番大切な言語は、勿論、日本語であるのも、以前書いた通り。つまり自分のITスキルという意味なら、日本語はそれなりに上手いと思っているので、そこそこあるというのが、結論となる。