電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

道路封鎖と最小不幸社会

口蹄疫の「道路封鎖」って凄い。その語感が特に。何かもうパニック映画の世界だ。

すぐに思い出したのが「カサンドラ・クロス」。ポール・ニューマンスティーブ・マックイーンが共演した「タワーリング・インフェルノ」(超傑作)から始まる第二次パニック映画ブーム(「第二次」だと自分は思う、その数年前の「ポセイドン・アドベンチャー」前後から確かにブーム的なノリはあったものの、この映画を嚆矢として、さらにブームが加速した記憶がある)の直後に出てきたオールスターキャストのパニック映画。

映画になるぐらいだから、動物ではなく、人間の話なんだが、内容は列車の中で発生した細菌感染者を、列車ごと爆破して葬ってしまえという政府サイドと、それに戦いを挑む列車内の人々の群像劇。

そんな大した映画じゃないんだが、アクターズ・スタジオのトップ、リー・ストラスバーグ(彼が死んで、ポール・ニューマンが継いだ筈だが、その彼も亡くなり今はどうなっているんだろう?)が、「いかにも上手い演技」を見せているのと、「地獄の黙示録」で主役を演じたマーティン・シーンが悪役を好演しているのが見所。今キャストを調べたら、イングリット・チューリンなんかが出てる。へえ、この人、ベルイマンの常連だよね確か。まあベルイマン自体を観てないんだが。

大した映画じゃないと繰り返しながらも、もう一度観たいなあと思った程度には面白い筈なので、「タワーリング・インフェルノ」(繰り返すがこちらは超傑作)と併せて、一応お勧め映画にしておく。

で、さらに思い出したのが「若き勇者たち」。こちらはパニック映画ではないんだが、アメリカの平和な田舎町に突如ソ連を想起させる軍隊が進攻してきて、チャーリー・シーン(上記マーティン・シーンの息子だね)を中心とする高校生たちが、レジスタンスを展開するという話。原題は「Red Dawn」であって、公開当時は、米ソ冷戦構造に対する右翼的でマッチョ的で脳天気で底の浅い映画と馬鹿にされていた記憶があるが、数年後に村上春樹が「そんなに悪くない」とエッセイでらしい褒め方をして、観てみたら、実際は傑作青春映画だったという。こちらはDVDも持っていて何回も観てる。超お勧め。

格闘技的にいうと、この映画の監督のジョン・ミリアスは、UFCのケージの考案者だったりする。この人がいなかったら、今のリング・ケージ論争なんてなかったと思うと、ちょっと感慨深いね。

で「道路封鎖」だが、映画だとその次は、その地域全体を焼夷弾を落として焼き払ってしまえとか、高い壁で囲って隔離してしまえとか、そういう陰謀が政府によって秘密裏になされるわけである。笑い事ではない。最小不幸社会という発想(自体は間違っているとは思わない)からすれば、導きだされるのは、そういうことなのだ。