電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

私は言葉を休ませない

何となくいい詩でも転載したい気分になり、本棚の奥から、学生の頃に女の子にもらった詩集を引っ張り出してみた。三十年近く前に読んだ詩なのに、三十年前の言葉ではなく今の言葉として、三十年前とは違う突き刺さり方をしてくるから、文学の言葉って凄い。

私は言葉を休ませない

時折言葉は自ら恥じ

私の中で死のうとする

その時私は愛している



何も喋らないものたちの間で

人だけが饒舌だ

しかも陽も樹も雲も

自らの美貌に気づきもしない



速い飛行機が人の情熱の形で飛んでゆく

青空は背景のような顔をして

その実何も無い



私は小さく呼んでみる

世界は答えない

私の言葉は小鳥の声と変わらない



 * * *


谷川俊太郎「六十二のソネット」より

角川文庫「谷川俊太郎詩集1 空の青さをみつめていると」所収