電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

美男子と煙草

もう3年前になるが、スマックを止めて、引き篭もっていた時、いやまあ、今も引き篭もっているので、格闘技関連の仕事をするかしないかだけの違いで、大してやっていることは変わらないんだが、時間的余裕は、当然あった為、丁度、日本語入力を親指シフトに変えたこともあり、その練習も兼ねて、毎日毎日、写経をしていた。いや正確には写経などではなく、青空文庫から太宰の短編を落としては、それを親指シフトで打ち込んでいただけだ。

本来の写経ではないものの、その効果は、多分似たようなものだとも思う。実際のところ、経など読んでも、現代語訳でもない限り、意味が取れないし、筆など使ってしまったら、毛筆で字を書くという行為に気を取られてしまい、まともに内容など頭の中に入ってこない。勿論、覚えたばかりの親指シフト、それで他人の文章を書き写して、内容がすらすら頭の中に流れこんでくるか、つまり、文字を入力すること自体に、気を取られず入力出来るようになっているかの確認も兼ねていたわけだ。

最近、あまりに心が荒れているので、少し落ち着こうと思って、またやってみるかと何気に選んだのが、末期の短編「美男子と煙草」だった。大した話ではない。決して傑作とは言えない小品である。が、冒頭部が素晴らしかったので、ここに写しておく。底本は青空文庫。とか書いときゃいいのかな? まあそうでなくとも、引用の範囲の量だし何でもいっか。

 私は、独りで、きょうまでたたかって来たつもりですが、何だかどうにも負けそうで、心細くてたまらなくなりました。けれども、まさか、いままで軽蔑しつづけて来た者たちに、どうか仲間にいれて下さい、私が悪うございました、と今さら頼む事も出来ません。私は、やっぱり独りで、下等な酒など飲みながら、私のたたかいを、たたかい続けるよりほか無いんです。



 私のたたかい。それは、一言で言えば、古いものとのたたかいでした。ありきたりの気取りに対するたたかいです。見えすいたお体裁に対するたたかいです。ケチくさい事、ケチくさい者へのたたかいです。



 私は、エホバにだって誓って言えます。私は、そのたたかいの為に、自分の持ち物全部を失いました。そうして、やはり私は独りで、いつも酒を飲まずには居られない気持で、そうして、どうやら、負けそうになって来ました。

こんなところで打ち切ると続きが読みたくなると思うが、大した話じゃないことは、繰り返しておく。