電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

まずはジャッジにはどういう種類があるのか考えてみる

さて、競技とは何か、ジャッジとは何かの続き。連載タイトルは「ジャッジを考えると競技がみえる」にした。読み直してみると、昔のブログの文章、無理してデスマス調で書いていたのが何とも辛い感じなんだが、まあそこはどうでもいっか。

下記の具体的なプロモーションの話は、あくまで発表当時のモノ。現時点は注釈で補足した。

「ジャッジを考える1」 2006.08.08


さて、格闘技において、ジャッジとは何か。ここから開始したいと思います。


何故、判定が存在するのか。まずここから考えてみます。


格闘技たるもの、まずはゴールがあるわけです。ゴールと表現しましたが、その格闘技自体の概念というか。


例えば、打撃系の格闘技であればKOであり、柔道であれば、きれいに投げきることであり、レスリングであれば、相手の肩を地面につけること(フォールですね)であり、ブラジリアン柔術や、サンボのように、関節技で「まいった」を言わせることです。


格闘技には、試合をその時点で終了させる目的、ゴールがあり、そして、定められた時間の中で、そのゴールに到達しない場合に、判定となるわけです。つまり、判定とは、本来はその格闘技のゴールに至っていない状態で、勝負をつける為の便宜的な手段であるとも言えます。


ここで、現在、プロ興行を定期的に行っている、総合の各プロモーションがどういう判定の形態をとっているか、分類してみましょうか。


1)判定なし(ドローとなる)
ZST


2)全体での判定
・PRIDE
・HERO’S
・DEEP
・DOG&デモリッション
スマックガール


3)ラウンド毎のポイント制
修斗
パンクラス
(*1)


総合以外も見渡してみると、プロの場合だったら、ボクシングやキックは、概ね3)となります。では、アマはどうか。レスリングや柔道やサンボのような競技まで考えてみると。そうすると、もうひとつ、分類が必要になります。


4)ある有効な状態にポイントが与えられるポイント制
レスリン
・柔道
・サンボ
ブラジリアン柔術


3)と4)では、同じポイント制という言葉を使ってますが、内容はまったく違います。3)の場合は、1Rごとに、ある得点を満点として(10点とか5点とか)、そこからの減点法により、それぞれのラウンドを、10−9とか、10−10と採点し、その合計で判定を行います。


一方、4)の場合は、ある有効な技だったり、状態だったりに、1点とか2点とか、加点するポイントを決めておき、試合が終った時点で、得点したポイントが多い方が勝ちとなります。柔道は、1本・技あり・有効・効果という表現をしていて、数値換算していませんが、分類としては、ここに入れていいと思います。


2)についても、ちょっと補足が必要でしょう。例えば、スマックガールの場合、ジャッジペーパー(スコアシート)にも、ポイントは記せず、試合が終った時点で、ジャッジが、どちらの選手が勝ちか、ある基準に従って、決めるわけです。


が、上記2)であげたプロモーションの中には、ジャッジの際には、3)と同様のポイント制で採点しておいて、発表としては、その数値は発表しないという形式もあり、その辺は、実際がどのように運営しているのかは、ルールを丁寧に読んだり、内部に入ってみないとわからなかったりします。


この曖昧さ・不透明さも、問題のひとつであるとは思いますが、そのあたりは、ちょっと後述するとして、まずはどういう形式・形態があるかの法を、先に片付けてしまいましょうか。


例えば、3)のラウンド毎のポイント制にしても、上記であげたパンクラス修斗は、ラウンドマストシステム(*2)は採用していません。つまり、1R内の判定で、差をつけることが義務付けられる、ボクシングのようなシステムではありません。キックも、国内のほとんどプロモーションは、非ラウンドマスト(10−10が許される)だと思います。つまり、今回、亀田興毅の世界戦で話題になった、ラウンドマストシステムを採用しているのは、ざっくり見渡すと、ボクシングだけです(*3)。この制度、国外/国内で基準が揃わなかった時期もありましたし、さらには、肝心のラウンドごとに差をつけることは、絶対ではなく、あくまで推奨されているだけで、絶対でないことが、またややこしかったりします。


だからと言って、いきなり、ボクシングのこのラウンドマストシステムはダメだろということにはなりません。このあたりも、後で詳細を記述します。


また、上記のポイント制等の分類とは、別の切り口がもうひとつ存在します。それはドローを設けるかどうかです。マストシステムと言っても、もうひとつの意味があるわけです。ラウンドマストというのは、1R内で、どちらかにポイントを振り分けるシステムですが、「全体でドローを設けないこと」というシステムも存在しているんですね。


3)の場合、合計得点が30−30だったら、ドローなわけです。トーナメントの場合、パンクラスの場合は、ポイントを発表しておいて、その上で勝者を決める判定をマストで行いますし、修斗だったら、ドローのまま勝者は決定せず、抽選でトーナメントの勝ち残りのみを決めます(*4)。そのそれぞれの長所・短所は、別にして、そういう制度です。


柔道やブラジリアン柔術は、ポイントの差がつかなかった場合、レフェリー/ジャッジによるマスト判定をします。つまりドローはないわけですね。


2)の分類に入るPRIDEには、ドローはありません。ジャッジは、必ずどちらかを勝者として判定します(スマックも同様)。逆に、DEEPやDOGは、ドローという判定が存在します。


また、どのプロモーションも、その判定基準・形態は、必ずしも絶対的なモノではなく、変更される場合もあります。これは総合格闘技は、まだまだ未成熟だから完成形ではないというのもあると思いますが、それ以外の意味もあります。例えば、アマ競技のレスリングは、数年単位で定期的にルールを含めて変更が入りますし、柔道の場合は、例えば講道館杯は「効果」はとらない等ローカルルールが存在していたりします。


つまり、ジャッジの基準・制度とは、その決められた時点であっては絶対的なモノですが、長い時間軸においては、変動しうるものであるということです。



というわけで、1回目は一気にここまで書いてみましたが、こうやって丁寧に説明していくと、やたら長くなるんですよね…。今回は、それを覚悟の上で丁寧に書いていこうと思ってます。つまんねーとかメールして来ないようにね(苦笑)。それも覚悟の上で書いているんだから。

*1:現状で考えてみると、PRIDEとHERO’Sは既になく、DREAMとSRCが生れ(前者は2、後者は3の判定方法だ)、DOGはケージフォースと名を変え、スマックガールも終わったが、ジュエルスとヴァルキリーが生れ、共に2の方法を取っている。
*2:この「ラウンドマスト」という言葉は使い方がややおかしいことは、連載の過程で書いていくことになる。
*3:現状UFCが、ここでいう「ラウンドマスト」に近い判定方法を取っている。ボクシングのジャッジが援用されているだけという消極的な採用にみえるが。この方法は、微妙な差でもどちらかに優劣をつける為、複数のジャッジ間で大きな相違が出る可能性が高い。その辺りの問題も別項でそれなりに書いたのだが、ここでは割愛する。
*4:現在は公式記録はドローで、トーナメント用のマスト判定を別途行うようになった。