電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

アマ修斗のジャッジについて考える

オールラウンダー廻」(講談社、遠藤 浩輝著)は順調に連載が進み、現時点では5巻まで発売中。快調だ。

さて、その舞台となるアマ修斗のルールが今回の分析対象。「オールラウンダー廻」の中では、ルール自体の説明はそんなに多くはない(繰り返し模写はされるが)、とにかくアマ修のルール、特にジャッジ方法は奇々怪々と言っていい。それこそ、各種グラップリングや打撃系競技への基本的な理解がなければ、何でそうなるのという感じだったりする。

が、実はよく考えられたルールなんだな。分かれば分かるほど、成る程! となるというか。今回は、その成る程っぷりを補足を含めじっくりと。ちなみに、あくまでジャッジ基準の話なので、本部席の前を横切ると失格になるとか、中指を立ててはいけませんとか、そういう部分には触れてないので念の為。

ジャッジを考える11 2006.09.02


というわけで、今回はアマ修斗のジャッジについて。


1)判定なし(ドローとなる)
2)全体での判定
3)ラウンド毎のポイント制
4)ある有効な状態にポイントが与えられるポイント制


アマ修斗のジャッジの最大の特徴は、打撃を3)の形態で行い、グラウンドを4)の形態で行うことです。


細部を確認してみようと思って、ネットでアマ修のジャッジ方法を探してみたんですが、見つけられませんでした。手持ちの修斗ニュースとかパンフも探してみたんですけど、これやり始めると違うもんまで読み耽ってしまい、時間ばっかりかかるので、途中で断念。なので、細部は間違っているかもしれませんので、詳しい方はコメントで補足して頂ければ(*1)。


例えば、4分1R(フレッシュファイト等ですかね、1Rは)の形式であれば、2人のジャッジが、打撃を10ポイントからの減点法で採点してます。つまり、ボクシングやキックボクシングとほぼ同様の3)の形式です。10−9とか10−10とかですね。


加えて、グラウンドはグラウンドでポイント制、柔術に近い(けれどポイント配分は違います、このポイント配分が見つからなかった)、4)の形式で、レフェリーがポイントを認定していきます。


終了時に、すべてのポイントを合計します。打撃ジャッジA・10−9、ジャッジB10−10、グラウンド2−4、合計22−23、従って、右側(後者)選手の勝ちというように。


全日本とかで行われる2Rの形式であれば、ポイントは各ラウンドを平均するのではなく、そのまま合計します。例えば、打撃ジャッジA・20−19、ジャッジB・20−20(2R分なので、20点満点となる)、グラウンド4−6、合計44−45というように。


※『アマ修斗ではトーナメント(全日本も含む)の準決勝までは4分1R、トーナメント決勝やワンマッチ(○○フリーファイト)の場合は3分2Rで行われます』とコメントくださった方あり。ありがとうございます(追記)。


ん? グラウンドは双方のジャッジがつけるんじゃなく、ひとつだけなの? という疑問が出るかもですが、それはそうです。4)の形式ですから。レフェリーが決定したポイントがひとつだけ存在します。


この方法、10ポイントからの減点法を採用しながら、ボクシングやキックが採用している10ポイントマストシステムではありません。


ここよく考えないとわからなくなりますので、要チェック。


ボクシングやキックの、10ポイントマストシステムは、それぞれのジャッジが、全体ラウンド通して、どちらかに勝者をつけることを目的にして、採点していきます。10ラウンドあれば、100−95とかになり、100の方が勝者。そうやって、個々に勝者を決めて、その結果、スプリット・ディシジョンとかユナニマス・ディショジョンとか決まるわけです。下記に簡単にまとめておきます。


<10ポイントマストシステムにおける勝者の決定法>
・3−0とジャッジの支持が揃った場合:ユナニマス・ディシジョン
・2−0と1人はドロー採点の場合:マジョリティー・ディシジョン
・2−1と支持が割れた場合:スプリット・ディシジョン
・0−0と3者が全員ドロー採点の場合:ユナニマス・ドロー
・0−1と1人はどちからを支持した場合:マジョリティー・ドロー
・1−1と3者の支持が割れた場合:スプリット・ドロー


が、アマ修斗の勝者決定法は異なります。それぞれのジャッジが自分1人の採点を合計して、それぞれの支持を決定するのではなく、全ジャッジのポイントを合計してから、全体で1回だけ勝者を決定するわけです。


ボクシングでも、10ポイントマストシステムとは異なる、ラウンドごとにそのラウンド勝者を決めていく「10ポイントマジョリティーシステム」というのがあるのですが(一部ローカルルールとして、採用されている)、これとも異なります。


強引に英語的に表現すれば、10ポイントサマリーシステムとでも言えましょうか。ここが、アマ修斗のジャッジ方法の面白いところであり、問題でもあるといえます。


打撃は3)、グラウンドを4)の形式で採点することにより、前回触れた「打撃系は抽象しにくい、強引にしてしまえば、競技の本質が失われる」という問題を、3)を採用することでクリアしながら、グラウンドは「組技系は抽象しやすい」特質を生かして、より競技化しているといえましょう。


まずは、このアマ修斗のジャッジ方法、総合格闘技においては、最も競技化された優れた採点システムだと評価したいと思います。が、その分、判り難いんですね。自分は、最近生でアマ修斗見てないんですが、すっかり忘れていたくらい。


なので、このルール、プロ興行に採用するには、問題ありということも言えます。判り難さは、興行性と矛盾してしまうからです(*2)。


ところで、何故、ジャッジは複数いるのでしょうか。


そりゃ、ジャッジが1人じゃ、おかしいこともあるからでしょ?


…えっ。ジャッジって、おかしい採点をつけることを前提として、複数いるんですか?


そんな声が聞こえてきそうな。


さて、今回のアマ修斗のジャッジ方法をブリッジとして、いよいよ次回はこの「ジャッジを考える」、佳境に入っていきます。


ついて来てねー。


*1:文中にも、後記を入れているが、さらに後日「若林太郎」を名乗る方から、下記のコメントを頂き、独立したエントリーを立てた。ご本人であったかは確認していないが、多分そうなんじゃないかと思う。

●テイク・ダウン=1ポイント 足を絡まれないように相手を倒した場合。
●トップ=1ポイント 寝技で上になった場合
●ハーフ=1ポイント 片足を絡まれたまま相手を押さえ込んだ場合
●サイド=2ポイント 柔道でいう所の押さえ込みで、相手に足を絡まれていない場合。
●ハーフ・トゥ・サイド=1ポイント ハーフからサイドになった場合。
●マウント=4ポイント 相手に馬乗りになった場合。また背後から相手の胴に足を絡め制した場合。
●バックマウント=5ポイント うつぶせで伸びた状態の相手に馬乗りになった場合。
●マウント・トゥ・バックマウント=1ポイント マウントからバックマウントになった場合。
●キャッチ=1ポイント 関節技が極まる寸前の場合。

倒してもインサイドに入るんじゃテイクダウンポイントはつかない等、色々特徴があると思うが、詳細についてはここには触れない。ちなみに、現在もこのポイント方式なのかは、確認していないが初出以降に「SHOOTO NEWS」サイトに、ルール自体が掲載されたので、詳細に興味ある方はそちらもご覧頂きたく思う。

*2:さらに、アマ修斗のルールで、よく指摘される問題点としては、プロとはルールもジャッジ基準も異なり過ぎて、直結していないという事。これは、関係者・選手を中心に散々語られていることなんだが、詳細はここでは触れない。アマ修ということではなく、総合格闘技全般のアマチュアということでみれば、競技レベルによって段階的にルールを変更していく、用具の性能を高め(つまり安全性を考慮して)可能な限りプロに近いルールを採用する、など様々な試みが、とっくに開始されていることのみ追記しておく。また、このアマ修斗ルールがホントにプロ興行向きではないのかということは、ラストにもう一回考えたいと思っている。

【※後記 2011.02.01 夕刻】dr様より、現状のルールについて、コメント頂きました。コメント欄も、ご参照ください。