電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

技術は作品に捧げられないと

極々一部で話題になっている動画配信サイト「hulu」、1ヶ月は無料お試し期間という事で、自分も登録してみた。

月額定額制は、昔のナップスターみたいな感じだが(音楽だけど)、あれは値段の違いで色々オプションがあってそれが便利だったんだが、「hulu」は一律1,480円でストリーミングだけで、コンテンツは米国ドラマと映画、さして目新しいモノは発見出来ず。んじゃ、目玉は何よと言われたら有料だから広告が出ませんというのと、スマホ対応くらいで、今時の動画サイトがスマホ対応なんて当たり前であって、サイトデザインが今時のスッキリクールなのは結構だけれど、それで大丈夫なのかね、成立するのかね感がいきなり漂う。

並んでいる映画もざっくりチェックしたものの、特に観たいものも発見できず、トップに出てくる「24」、そういやシーズン6までしか観てなかったと思いつき、シーズン7を観ることにした。

いきなり、字幕の酷さに口あんぐり。字幕自体が表示されないという障害も出てるらしいんだが、それについてじゃない。まだ無料期間なんだし、障害は真っ当に対応すればいい。ところが障害じゃなく、ちゃんと表示されていても、タイミングがおかしいんである。後ろにズレるなら、まだ耐えられるんだが、微妙に前にズレる。AとBの会話で、まだAがしゃべっているのに、次のBの発言の訳が出てしまう事多数。

自分は字幕関係者(?)でもないでもないけれど、これ、一発で原因がわかるんだな。iTunesなどのサイトだと、字幕版と吹替え版が用意されている事が多いわけね。入り口が最初からふたつある。ところが「hulu」は、DVDのように別トラック(とはいわないだろうけど)で字幕を用意して配信時に動的に乗っけている模様で、入り口はひとつしかない。iTunes的方法だと、最初から字幕を乗せた映像と、日本語音声を乗せた映像のふたつを別途用意しているのに対し、「hulu」は映画自体の映像はひとつしか用意していない(と思う)。

何でこんな事をするのかといえば、字幕を消したい人は簡単に消せるわけだし、表示するにしても、フォントの色や大きさを自在に設定出来るようにする為(だろう)。さらには、既存の日本語版の権利を購入せず、国内の映画会社を通さず配信出来るなんて利点もある(こっちの方が大きいのかも。つまり、多言語対応にメリット)。つまり、この字幕別トラック方式(?)、「hulu」の製作の筈で、そのオリジナル字幕が、遅れて出るのは怒られそうだから、とりあえず早く出しときゃいいだろ的な、作品を理解出来ない連中の雑な仕事になっている。

それにしても、字幕がほんのコンマ何秒早く出る事が、こんなに不快だとは思わなかった。考えてみれば、字幕が早く出てしまうということは、数秒後の映像をイチイチ先に文字で説明されてしまう場合が多いわけで、自分が感じた不快さの理由は明確だったりするんだが、長年、字幕で洋画を見てきて初めてに近い経験だ。いわゆるファイル共有系でゴニョゴニョされた自主制作字幕(?)も観た事あるけど、あの手はネット職人系の子が必死にやるから、少なくともタイミングのクオリティは高かったりして(訳のクオリティは自分は判断できない)、この点で不快になった事はない。

そこでタイトル。結果として、新しい技術が不快感にしか繋がらず、作品をスポイルするなら、その技術に意味はない。「24」は、とりあえず品数増やす為に入れました的なマイナー作品ではなく、サイトのトップに出てくる看板作品(シーズン8はまだ入ってないから、つまり看板の最新シーズンが7だ)。その看板のクオリティがこれなわけだ。こういう、作品に愛を感じない事やってると、すぐに潰れるねというのが「hulu」に対する現時点での感想。