電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

坂の上の雲を目指して駆け上がっていったら原発が出来ていた

NHK大河ドラマの感想は、ほとんどツイッターで呟いて済ましすようになり、ここに書く事もなくなってしまったが、「江」も先週で終わり、「坂の上の雲」が始まってしまったので、たまはちゃんと書いてみようか。

今年の「江」は、少なくともここ十年くらいでは群を抜いた駄作であった。一番面白かったのは初回を観た後にここで褒めた、市が小豆袋を信長に届けず、床に叩きつけたところだった。秋に入ってからは、瞬間風速的には、面白い回も何回かあったし、持ち直したと言えなくもないんだが、何と言っても捏造ドラマすらロクロクないのが辛い。ドラマがないなら、もう少し忠実に歴史描いとけみたいな。こちとら昔からの大河ファンには珍しく寛容な心で鑑賞してるんだからさ。

結局「篤姫」の何が面白かったのかを、制作陣が何も分析出来てなかったとしか思えない。はっきり言って篤姫の主要登場人物では一番面白くなかった勝海舟北大路欣也を、ダラダラ出しとけば何とかなるだろう的な、それでいて、キャラ作りは完全に破綻してしまい、太平の世を作る為ボクちゃん鬼になっちゃうよ的な安易な歴史解釈のみが、そこここに横行し、いやそれ違うから、どんな時代でも、天下取ったる位のことを思う男は、石投げればポコポコ当たるほどにいるんであって、さすがにそこを理解せずに、歴史モノを書くのは、もう勘弁願いたいという話だ。

かと言って「坂の上の雲」を大絶賛するのかと言えば、そうではない。どーなんでしょこれ。第三部の初回を観た限りでは、予算豊富で絵ばかりキレイな戦争ドラマ、中身はスカスカ「史上最大の作戦」か「遠すぎた橋」かよという感じになりそうな気がしてならない。

史上最大の作戦」では淀川さんも絶賛してた(記憶がある)、クレーンカメラ(いやヘリコプターだったかな?)を使った豪快なカットがあって、あれは確かに何回観ても凄いと思うし、同様に「坂の上の雲」も充分凄いカットがある。テレビドラマどころか映画ですら国内ではあり得ないレベルの事をやっている。ただ原作も日露戦争に入ってしまうと人間ドラマはスカスカで、緻密な戦記モノになってしまうわけで、一応原作に「坂の上の雲」と並んで、乃木希典主人公の「殉死」も小さく入っていることだし、せっかく第二部で明治天皇も出したんだから、後日談的にそのあたりの話までぶち込んで欲しいところだが、まあ多分やらないんだろうな。

つい先日、三池崇史の「十三人の刺客」を見た。これが素晴らしかった。森田の「椿三十郎」にも、樋口の「隠し砦の三悪人」にもなかった、原作への愛とそれを超えようとする志の高さが感じられて、それがよかった。工藤版の「十三人の刺客」についてはここで少し書いているが、集団戦闘モノの元祖であるのと同じレベルで映像美に溢れた映画であり、それをそのままなぞるのでなく、原作の美しさを、違うカタチで表現しようとする志に溢れていたんである。まあ全編に渡って殺陣が丁寧で素晴らしかったというのも大きいんだが。

坂の上の雲」、いよいよあと三回だ。「史上最大の作戦」にならずに三池版「十三人の刺客」になればいいなと、自分の不安が杞憂に終わる事を祈って、楽しみに鑑賞する。