電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

掌編/白馬に乗った編集者

【note記事のバックアップ&再現テスト】

 

 死にたいと思ったわけじゃない。これ以上、生きていても、やる事がないだけだ。
 ずっと、書かなきゃと思っていた。最初は、夢や志であった筈のそれは、すぐに、脅迫観念に育った。自分には、それしかない。それしかないんだ。
 何故、そう思い込んだのかは、今となっては、よく分からない。ただ、それ以上の生き方を見つける気などなかった。
 待っていた。
 何かを、ではない。白馬に乗った慧眼編集者が、丘の上から、ぱっからぱっから、駆け下りてきて、貴方という才能を見つけました、迎えにきました、と言ってくれるのを。
 書いてもいないのに、何処に、発見される可能性がある? あるわけがない。ゼロ。でもね、きっと見つけてもらえるのだ。
 根拠のない自信ではない。根拠ならある。ほら、この心の内を見てご覧、こんなに、根拠も説得力も溢れている。
 ところがどうだ、こんなに面白くない。面白くないもんしか書けないんだ。書くだけ無駄だ、つまんないもんしか書けないんだから。もう分かったんだ。
 だから、死ぬんだ。
 やる事ないから、死ぬんだ。
 書く事ないから、死ぬんだ。
 書きたくないから、死ぬんだ。
 そう決めたら、心が楽になった。
 白馬に乗った慧眼編集者は、きっと、明日迎えに来てくれる。

 やあ、見つけたよ見つけましたよ、君という才能を。僕は、慧眼編集者。この生き馬の目を抜く街で、ベストセラー連発の慧眼編集者。
 君の注文は、細かいね。まず、僕は馬に乗れない。仮に、乗れるとしたってだ、白馬はどうするんだ。街に乗り付けていいレンタル白馬なんて、寡聞にして、存じあげません。自慢のSUVじゃ駄目かい?
 まあ、いい。そこは本題じゃない。
 今時、直コンタクトなんて、必要有るのかな? 時間こそが、コストだぜ。勿論、作家と編集者が心通わせ、信頼関係を、しっかり、築き上げる事は重要だ。僕は、慧眼編集者だからね、そんな事は分かっている。
 ただ、あえて言うなら、デバイスを通してこそ、今の時代、真の人間性が見えてくる。僕は本気で、そう思っているのさ。
 何だか面倒くさくなってきた。今思い出したんだが、明日は用がある。明後日にしませんか。つうか、一昨日来やがれ、馬鹿野郎。