電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

格闘技失語症

突然、古い連載を持ち出して、そこに入れる文章を書いてみる。「プロモーターはみんな飛ぶ」。うむ、飛ぶのである。で、何を書くのかといえば、自分と総合格闘技の関わりについて書く。

自分が総合格闘技に深くハマったのは、観ることより、むしろ語ることが楽しかったという側面が強い。より正しく美しく魅力的に語りたい。だからもっと観なければ。そうやってのめり込むように観るようになった。もう10年以上前の話だ。そこから巡り巡って、運営に関わることになり、いつの間にやら主催者にまでなって、ウマく行かずにボロボロになって、一度は完全に足を洗うつもりで辞めたものの、結局また運営に関わっている。

女子総合に限らず、最近でも、オフィシャルな文章、つまり無記名でカードのいわゆる煽り文章を書くこともあるんだが、いつの間にか筆、否キーボードを打つ手が進まない自分がいる。格闘技に関して語ること、ヘタだとは思わないし、ネットにおける格闘技の速報というフォーマットは、自分が作ったに等しいという自負もなくはない。けれど、格闘技に関して語ることが、どんどんヘタになっているという自覚がある。

インサイダーになってしまったからだと言ってしまえば、もうそれで話が終わってしまうんだが、多分それだけではないような気もする。2・3年前までは、試合以外の運営に関するネタなら何とか書けた。が、それすらツラくなり始めた。格闘技、総合格闘技を嫌いになってしまったのか。それは違うという確信はある。

元々、格闘技の運営に関して、やりたいことと言えば、演出くらいだった。マッチメイクをやりたがる人はファンにも関係者にも多いが、自分は元々あまりやりたいという気持ちがないし、インサイダーになっても、実際やりたがらない。あんな面倒臭い作業を何でやりたいと思うのか理解すら出来ない。ファンの方々の多くが、マッチメイクという作業を勘違いしているというのもある。マッチメイカーとはカード案を考える人ではなく、そこからその試合を成立させる作業をする人のことを言う。実に泥臭い作業なんである。

唯一やりたかった演出という作業は、スマックガールに関わって1年ほどで、ほとんどのことはやりつくしてしまった。勿論、予算がもっと豊富にあればやれることはいくらでもあるんだが、いつの間にやら、その予算を作ることまでが自分の作業になってしまい、さらには、自分の作ったフォーマットを、よりクオリティーを上げる為にどうするか、過去のフォーマットを崩して、どう次に繋げるかが、一番自分のやるべき作業になってしまい、そこにはクリエイティブ(という言葉は嫌いだが、そうとしか表現できない)な作業は、ほとんど存在しないというのが現実であり、つまり、これまた泥臭い雑用の積み上げなわけだ。さらには、この不景気下においては、現状維持、いやスケールダウンでもいい、とにかく興行を続かせることが、最優先の課題となったりする。益々作業は泥臭くなる。

そして、自分の格闘技に対する失語症が酷くなる。

だから、自分の代わりにもっと素敵に楽しく、格闘技の面白さを語ってくれる人を待望する(と何回も書いている)。現状、いないとは言わない。が、明らかに足りない。いやホント頼みます。自分も、いつかもう一度格闘技を楽しく魅力的に語れる力を復活させたいとは思っているが、当分は無理だろう。この失語症を治癒させる方法すら思い浮かばないのだから。いやひとつだけ、すぐ思いつく方法はある。それは、今すぐ格闘技の運営から引退することだ。そうすれば、その3年後位には、また語りたくなると思う。

こういうこと書くと、お前がそんなことを書いてはイケナイと怒られたりした。怒ってくれる人がいるウチはまだいい。自分は既にそういう人すら、ほぼ失ってしまったわけで、そうまでして続ける意味あんのかという話である。孤立無援。今更、自分の能力不足を嘆いてもしょうがないんだが、何でこの程度のことを、やりたがる人間が出て来てくれないのかと、疑問に感じる夜が、どうしたって増えるんだ。