電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

膝と膝の間に

どちらかといえばO脚らしい。

らしいなどと曖昧な事を書いているのは、それらしいと気付いたのが、何年か前、何かの機会、健康検診的・体力測定的なモノをやらされ、前屈を測る際に、はい膝曲げないで両方の膝ちゃんと付けてとか言われて、付けてるつもりなのだが付いてない、駄目です付けなきゃ、いや付けたくてもつかないんだ、こうやって付けるんです、ほらぐいぐい、そんなにぎゅっとしないでいたたたっなどという事があったからで、それでもとりわけO脚などというレベルのことなのか、よく分かってない為、どちらかといえばとか、らしいという辺りの表現が精一杯な訳である。少なくとも間違いないのは、普通に直立した状態で足を閉じていると、両足の膝頭の間には数センチの空間が出来てしまう。最も踵を付け爪先を開くようにすると、あっさり付いてしまうから、益々判断に迷う所ではある。

寝る時は横向きで寝る。目が醒めると、ほとんど上を向いているんだが、それでも寝入る時は横を向く。どっち向きでも構わない。その時、足はぴったり揃える。下になる足の膝に、上の足の膝が乗る形になる。

病気をして大幅に痩せた。食事には気を使い続けているし、軽い運動も積み重ねているので、まだ三ヶ月強ではあるものの、体重は更に落ちることはあっても退院時のそれを超えたことはない。身体が軽くて、概ねというか全般的には調子は良い。ところが、寝ようとすると、膝が痛いのだ。恐らく股から膝までの脂肪が落ちたからだろう、横を向いて脚を重ねると、両の膝がごりごりっと当たる感覚があって、痛いというのは、やや大袈裟かもしれぬ、それなりの不快感というのが妥当な辺りとも思うんだが、毎晩ごりっと来る。

O脚的に離れた両膝が、横を向いて寝る事で、重力によって、X脚への強制圧力が掛かっている状態とでも言えようか。加齢によって膝関節が柔軟性を失ってきているのかもしれない。兎に角、痛い。というほどでもないが不快だ。

そこで、寝入る時に、タオルなどを畳んで膝の間に挟んでみた。意外や悪くない。ユニクロのフリース辺りだと畳んでもふかふかで尚更具合がよい。目が覚めて上を向いていると、挟んだ物体は何処かに蹴散らしてるが、たまに横を向いた状態のままだと、ちゃんと挟んだままだったりする。万事解決と言ってよい。

が、この程度のささやかな出来事からでも考えさせられる事もあるもので。

二十歳を過ぎてから、ひたすら溜め込んだ脂肪の替わりに、少しずつ無くしていったものが、その脂肪を落としたからといって、戻ってくるかといえば、そんなことはないのである。

それは、股の筋肉や、膝関節の柔軟性だけでなく、熱い情熱だったり、長続きした集中力だったり、そうして、替わりに、脂肪と一緒に、諦めの良さや、シニカルな笑いばかりを蓄積してきたのだ。

失ったものを取り戻すのは大変でも、もっと色々捨ててしまって、もっと身軽になるなら出来るんだと、少しは前向きに今の自分を状態を理解して、すかすかになった膝と膝の間に、今日もユニクロのフリースを挟んで寝るとしよう。