電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

昔子供だったことを忘れてしまう大人は確かに多い

吉田大八の4本目の監督作品「桐島、部活やめるってよ」。

自分のツイッターTLでは異様に好評で(それ以上にタイトルがネタとして流通してて)、クチコミで公開拡大されたらしいんだが、かと言って大ヒットというとこまでは行ってない模様。おれは公開2週で、既に2回観てしまった。映画館にはあまり行かない自分にとってはこれは凄く珍しく(ここ数年ではキタノの「アウトレイジ」以来)、つまりそのくらい面白かったということで、少しでも早めに何か書いて、応援したいというのもある。

初見時に『タイムトラベルしない「サマータイムマシン・ブルース」を思い切りセンシティブにした感じ』と感想を呟いて、おれ上手いこと言うなと思ったんだが、「サマータイムマシン・ブルース」自体が「踊る大走査線」の本広克行で、瑛太上野樹里が出ている割には、あんまり知られてない為、自己満足に終わってしまったという(この映画もかなりお勧め)。

さて桐島、ネットでは桐島はキリストやゴドーのメタファーという指摘も見かけたが、まあそういう細部の解釈はどうでもいいや(ちなみにゴドーに関しては、おれは、たまたまそう取れなくもないという程度だと思うんだが、こういう様々な解釈が生まれるのは傑作の証明に近いとも思う)。

高校生の話だから、青春映画なんである。青春映画といえば、勢い一発みたいな小品が傑作になることも多いわけだが、この映画は非常に緻密。狙って研ぎ澄まして張り詰めて、それがアザトさに繋がらず、さわやかに抜けよく、かといって、とっても切ない仕上がり。2回目は色々確認しながら観たんだが、ちょっとした役者の揺れる表情に、まったくホンとの矛盾がない。きっちり作ってある映画であれば当たり前といえなくもないんだが、ここまでナチュラルな演技をさせた上でこれなのが凄いと思う。

いい映画をみると、他の人がどう褒めているか感想を探したくなる。一番面白かったのは「大人はこれ分からないだろ」という子供の主張。多分、そういう映画なんである。

が、残念なお子さんは知らないと思うんだが、大人は昔みんな子供だった。桐島を見て「おれにもこういう時代があった」と思うか、「ああ今でも同じことやってる」と思うかで、大幅にその受取り方は違ってくるが、大人って子供の事を結構知ってるもんだ。と、書いてはみたものの、忘れてしまっている大人が多い事も認めるのに吝かではない。

群像劇で、神木隆之助がキャストとしては一番上に出てくるわけだが、実質的な主役はモデル(らしい)で、映画初出演の東出昌大というお兄ちゃん。この子が素晴らしい演技をする。超期待株だと思う。