電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

も少しがんばれ左傾批評! −「風立ちぬ」周辺雑感−

宮崎駿の「風立ちぬ」は、その明らかに説明不足の模写や、時代背景に対して基本的な知識が要求されることなどから、世のオジさんにとっては、まさに語りがいがある作品だと思うんだが、それゆえ偉い人でも、結構おかしな事を言っていて、そこがまた面白い。

以下は自分のツイートをあえて再構成せず、時系列に。ネットで語られていることと、それに対する自分の反応がキモなので。

7月24日:新宿のバルト9で鑑賞。その直後にツイート。

風立ちぬ」。ファンタジーじゃねえか(笑)。あんな菩薩様みたいなお姉ちゃんに愛された記憶があれば、兵器製造への良心の呵責も、夢の挫折も何やかやあっても、おれなら笑って生きていけるもの。(続く #eiga
posted at 14:17:23


続き)セルフオマージュ多過ぎの序盤、尺を考えての事だとは思うが、切り過ぎて唐突になってる気がする。しかも人がゴミのようだった。避暑地の風景と合わせて堀辰雄的といえばそれまでだが。あと仕事と恋愛が分離し過ぎ。ただ、自分の中で育つ映画かもしれないとは思う。 #eiga
posted at 14:23:52


そうそう、庵野の声はドンピシャで悪くなかった。
posted at 14:32:09


帰宅後、あっちこっちのツイートを探して読んでみて。

風立ちぬ」の批評、あっちこっち読んでみてびっくり。葛藤ならモノ凄くあるではないか。その方向の批判は圧倒的に見当外れ。アズマ先生とかオタク命名者の人とか。 #eiga
posted at 15:56:48


例えば避暑に行く前の、背中と飛行機の残骸だけ見せる1秒くらいのカット。葛藤ないなら、避暑に行く意味わかんないじゃん。不思議ー。 #eiga
posted at 15:59:58


それに基本が技術者というより職人の話じゃん。政治的にも思想的にプレーン。そこをわざと強調してるんだから受け止めなきゃ意味がないと思うんだわー。紅の豚直系のファンタジー。紅の豚ほど面白くないけど。 #eiga
posted at 16:03:41


いいとこのぼんぼんの技術者がメゲて軽井沢いくから堀辰雄なんじゃないのか。 #eiga
posted at 16:06:41


あれさ、主人公が原発のエンジニアだったら、と考えると分かりやすいんじゃないかな。翼賛も罵倒もせず、意地になってプレーンというかフラットなところで踏ん張ったのは、さすがだと思ったけどな。 #eiga
posted at 16:20:51


紅の豚の直系と書いたけど、細かく言えば、今回の主人公は豚さんではなくフィオの直系でさ。飛行機を原発に置き換えると分かりやすいってのは、そのままアニメに置き換えてもよくて。つまり自伝的なんだね。宮崎駿のこういう作品至上主義は好き。人より作品の方が重要なんだな。
posted at 16:41:01


つまり「風立ちぬ」は作り手の為の作品で、批評家の為の作品じゃないんだね。……と、あんまり面白くなかったし大して泣けなかったんだか、猛烈に擁護したくなってしまった。 #eiga
posted at 16:45:25


村上春樹がコミットメントとか言い出してる今に、七十過ぎてディタッチメントしてみせるのってカッコいいと思うんだよな。思想とか政治とか、こまけーことはどーでもいいんだ的に。……まっパンピーがそれやっても駄目なんだけどね。 #eiga
posted at 16:54:09


というわけで、ポニョは問題作だけど失敗作、風立ちはエレガントだけどあんまり面白くない、というあたりが当日のおれ評価。
posted at 17:11:08


7月25日:高橋源一郎が、どっかの新聞で、ゲンロンのチェルノブイリ本と並ぶべて褒めてるらしいのを見かけて。

源ちゃんが「風立ちぬ」に対して、自分と同じ見方をしてる(ようだ)。さすが。って影響受けてるのはこっちだが。
posted at 12:27:15


あと昨日は触れなかったけど、イタリア的なおおらかさとドイツ的な合理性の対比、結果生まれてくる日本的な美というところは、結構面白く分析できるような気がするわ。クレソン親父をだしたのは、ドイツを少しディスり過ぎてるからバランス取った感じか。
posted at 12:29:38


豚さんは国家や軍に背を向けてかっ飛んでみせるからカッコいいけど豚なんだね。堀越二郎は会社や軍の垢にまみれて、それでも技術者であることをまっとうしようとするから、全然カッコよくはみえないけど、だからこそ人間なんだね。
posted at 12:51:55


てか、やっぱこんだけ考えさせてくれるから、いい映画なんじゃなね? >風立ちぬ
posted at 12:53:26


7月26日:小飼弾がおかしなこと書いてるのを見かけて。

またトンチンカンなことを(苦笑)。本歌取りは元ネタ陵辱した方が傑作が生まれやすいのは常識に近い。そこに正当性も根拠も必要ない。/404 Blog Not Found:原作陵辱 - 品評 - 風立ちぬ http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51880843.html
posted at 10:03:44


ダンコーガイ、昔筒井ファンであるようなこと書いてた記憶があんだが、まるで筒井に難癖つけた百目鬼恭三郎みたい。
posted at 10:11:51


そもそも、堀辰雄がいわゆる左傾批評から延々馬鹿にされてきたプチブル文学(?)であるということが分かってないから、ああいうトンチンカンなことを書いちゃうんだよな。
posted at 10:25:01


7月28日:これは特定のどこというわけではないが、明らかにやっと「堀越二郎=駿」に焦点が合い始めたんだが、しかし……というあたり。

風立ちぬ」評、少し流れが変わってきて、堀越二郎=駿に焦点が合い始めたのはいいんだが、「芸の為なら女房も泣かす」的な解釈もチト違うと思うぞ。時代を考えないと。「麻雀放浪記」のドサ健の名科白「死んだお袋とこいつ(奥さん)にはいくら迷惑かけてもいい」とかさ。(続く #eiga
posted at 23:43:29


続き)何と言っても、彼女のお父さんの科白と、片手計算尺世界一の科白を無視しちゃダメだろ。世界一になるには毎晩あれってことだぜ。そりゃ作品至上主義ではあるんだけど、充分優しく描かれてるじゃないか。少なくとも、ドサ健や春団治よりはるかに。 #eiga
posted at 23:44:10


8月2日:バルス祭りの途中で。

あれさ「風立ちぬ」が「絵がきれいだった」って感想はよく見るんだけど、ナウシカラピュタだけ、抜けてきれいだと思うんだよなあ。画質とか描きこみの問題じゃなくてさ。 #eiga
posted at 21:23:46


8月3日:竹熊先生があれれ? ということをツイートしてたので。

タケクマ先生に教えてさしあげたくなるが、どうせ誰かがリプしてるだろうから思いとどまる。堀辰雄は士族の出。だからこそのプチブル文学で。二郎の方がどうだったかは知らないが、映画内でも実家に女中がいた。要は最初から金持ちの話なんだよ。
posted at 22:56:26


あれは庶民の話ではなく金持ちの話であるということに気付かなかったら、半分くらい分かってないことになるような気がするんだが。金持ちで才能あって美人ちゃんに惚れられる、とことん恵まれた奴の話なんだよね。
posted at 22:58:20


風立ちぬ」においては、堀辰雄がどういう小説を書いていたのかよりむしろ、堀辰雄がどう評価されてきたのかの方が重要だと思うんだよね。ところがサブカル系(?)の人たちはそこにまったく気付けていないというか。
posted at 23:21:56


というわけで、「風立ちぬ」はむしろ旧来の左傾批評的(?)な方法論の方が扱いやすい筈なんだが(何ていったって堀辰雄なわけだし)、どうもそっち系の人は、あんまりネットですぐに意見という感じでもなく、ネットと親和性の高いサブカル系の人たちは、根本的なところが分かってない感じがして、こうして自分のツイートをマトメておく次第。


追記:実は堀辰雄、ロクロク読んでないんだが、どう評価されてきたかには詳しいんである。理由はシンプルで高校のパイセンだから。あれだ、堀辰雄は、柿沢こうじとかミラーマン植草とか(ともにパイセン)と同じなんだ。結構気になっちゃうの。