電脳如是我聞の逆襲

他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ

安全計量とは何か?

兎にも角にも、時代の趨勢は前日計量であるというのが、前回までのお話。ええと、それを見るのは、すぐ上の「階級制においてフェアとは何か?」というところをクリックしてください。最初から見られます。

ルールの中で、選手が、最善を尽くすのは当たり前の話だ。前日計量が常識的になると、今度はそのルールを生かして、計量をクリアした後、いかにリバウンド(って言ったら、そりゃダイエットだろ)じゃなくて、リカバリーするか、つまり、いかに身体に負担をかけずに体重を戻すか、そういう方法が熱心に研究されるようになってきた。

いわゆるハイパーリカバリーという方法。結果として、試合当日には実際の契約体重を大幅に超えている選手が続出することになった。この方法、日本ではあまり一般的ではなかった方法で、一気に直前に落とすんだが、むしろ以前はよくない方法として扱われることの方が多かったように記憶しているんだが(主にボクシングにおいて)、昨今では、むしろこの方法が主流になりつつある傾向がある。

が、そうなってみると、70キロ契約なのに試合の時は、80キロ以上なんて選手が続出することになり、それって全然フェアじゃないんじゃない? という疑問が出てくるわけだ。そもそも階級制というのは、「同じ体重という条件で双方が戦う」というのが前提であって、それが双方に対してフェアだという考えからスタートしているわけで。

この連載、簡単に階級制の問題をさらっと触れて、それで終わりにするつもりだったのだけど、実はこの問題、考え始めると色々面白いのだ。まさにフェアとは一体何なのかという話で。総合の話を超えて、西洋思想と東洋思想の対決的な、あるいは民主主義の成立にからむモダンとポストモダンの相克というか、いやそこまで書くのは、ちょっと大袈裟かもしれないが、まあそういう話であるんだが、それは後回しにする。

いくら何でも、当日に戻り過ぎるのは、如何なものかという話から、「安全計量」という概念が始まった。つまり、安全計量とは、前日計量を前提として、少しでも本来の階級制の精神を取り戻そうという考え方だ。

JBCでは、ルールというとこまで正規なものかは知らないけど、当日計量して、体重の8%以上戻っている選手には、階級変更を勧告するという制度が始まっているようだ。これがどこまで強制力を持つものなのかは、寡聞にして知らないが、間違いなく無いよりはマシだろう。70キロだと、8%は5.6キロとなる。いわゆるハイパーリカバリー的な方法を取れば、これはあっさり超えてしまうラインだ。

もう少し強制力のあるルールとして、アメリカでも州のコミッションによっては、このルールを採用し始めているところもあると聞く。

で、ケージフォースとヴァルキリーの話。今年から採用された。安全計量のリミットとして、採用されたのは基本的には1階級上のリミット。つまり、女子でいえば、女子フェザーの52.2キロの契約ならば、安全計量のリミットは、ひとつ上の女子ライトの56.7キロということになる。罰則規定やリトライ方法などは、まだ試行錯誤の段階であることは(つまり、この計量をクリア出来なかった場合どうするか)、申し添えておくけれど。

こういうことは、まずは始めることに意義があると思う。その際必要になるのは、階級制とはそもそも何なのか、一体どういう理由で階級制を採用しているのか、そういう根本に立ち返ることなんじゃないかと思うのですね。と、何故か最後は妙に弱気。

ここで階級の話は一旦終了して、続きは少し練ってからやります。で、明日からは、プロモーター話に戻ります。